戦闘機のエンジンについて調べていると、「大きな炎を噴き出して飛ぶ装置」というイメージは浮かんでも、内部で何が回り、どこで燃料を燃やし、なぜ機体が前へ進むのかまではわかりにくいですよね。
結論からいうと、現代の戦闘機に搭載されるジェットエンジンは、空気を取り込み、圧縮し、燃料を燃やし、空気と燃焼ガスを後方へ加速させることで推力を生み出す装置です。
ただし、仕組みは単に燃料を爆発させているだけではありません。圧縮機を回すタービン、空気の流れを調整する吸気口、推力に合わせて出口の広さを変える排気ノズルなど、いくつもの装置が連続して働いています。
この記事では、戦闘機エンジンの仕組みを初心者にもわかる言葉で整理しながら、圧縮機、燃焼室、タービン、アフターバーナー、冷却、可変排気ノズルまで順番に見ていきます。
旅客機用エンジンとの違いや、戦闘機に逆噴射装置が付いているのか、エンジンの値段はいくらなのかといった疑問にも触れます。読み終えるころには、戦闘機の後ろから炎が見える理由だけでなく、見えない内部で起きていることもイメージしやすくなるかなと思います。
- 戦闘機に使われるジェットエンジンの構造と作動順序
- 圧縮機、燃焼室、タービン、排気ノズルの役割
- 低バイパス比ターボファンと旅客機用エンジンの違い
- アフターバーナー、冷却、推力偏向の仕組み
- 戦闘機の減速方法とエンジン価格を見るときの注意点
戦闘機エンジンの仕組みを流れに沿って解説

- ジェットエンジンは吸気・圧縮・燃焼・排気で動く
- ジェットエンジンの原理を子供向けに説明
- 戦闘機では吸気口の設計も性能を左右する
- 戦闘機に低バイパス比ターボファンが多い理由
- 戦闘機のアフターバーナーは排気をもう一度燃やす
- 圧縮機は回転羽根と固定羽根で空気を高圧化する
- 燃焼室は火を消さずに安定して燃やし続ける
- FADECが燃料とエンジンの状態を自動制御する
ジェットエンジンは吸気・圧縮・燃焼・排気で動く
戦闘機のジェットエンジンは、前から後ろへ空気が流れる一本の大きな筒のように見えます。その内部には、役割の異なる装置が順番に並んでいます。
| 部分 | 主な役割 |
|---|---|
| 吸気口 | 外気を取り込み、圧縮機へ安定した流れで導く |
| ファン・圧縮機 | 空気へエネルギーを与え、圧力を段階的に高める |
| 燃焼室 | 圧縮空気へ燃料を噴射し、連続的に燃焼させる |
| タービン | 燃焼ガスから動力を取り出し、圧縮機やファンを回す |
| アフターバーナー | 必要な機体で排気へ燃料を追加し、一時的に推力を増やす |
| 排気ノズル | ガスの圧力や速度を調整して後方へ排出する |
作動の出発点は吸気です。エンジン前方から取り込まれた空気は、圧縮機を通る間に少しずつ圧力を高められます。圧縮された空気へ燃料を細かく噴射して燃やすと、温度の高いガスが生まれます。
高温ガスはタービンを通過し、羽根を回転させます。タービンと圧縮機はシャフトでつながっているため、タービンが取り出したエネルギーによって前方の圧縮機が回り続けるわけです。
ここは混同しやすいところですが、タービンは推力を強くするためだけに回っているのではありません。主な役割は、圧縮機、ファン、発電機、油圧ポンプなどを動かすために、燃焼ガスから必要な仕事を取り出すことです。
タービンを通過したガスは排気ノズルから後方へ流れます。ターボファンエンジンでは、燃焼室を通った高温ガスに加え、ファンによって外側へ送られた空気も推力を受け持ちます。
推力は、空気を後方へ加速させたときの運動量の変化と、ノズル出口に残る圧力の作用によって生じます。「後ろへ空気を押し出した反作用で前へ進む」と考えると、全体像をつかみやすいでしょう。
- 吸気口から必要な量の空気を取り込む
- 圧縮機が空気の圧力を段階的に高める
- 燃焼室で燃料を連続的に燃やす
- 高温ガスがタービンを回し、圧縮機へ動力を戻す
- 残ったエネルギーで空気とガスを後方へ加速させる
- 必要に応じてアフターバーナーで推力を一時的に増やす
自動車の一般的なピストンエンジンでは、吸気、圧縮、燃焼、排気がシリンダーごとに周期的に進みます。一方のジェットエンジンでは、各工程が別々の場所で同時進行します。空気が流れ続けている限り、燃焼も連続するのが大きな違いです。
なお、エンジンの推力だけで飛行機が浮くわけではありません。エンジンは機体を加速させ、主翼に当たる空気の流れを作ります。その結果として主翼に揚力が生まれ、機体が空へ上がります。離陸時の速度や揚力との関係は、飛行機の離陸速度と離陸距離の解説も参考になるかなと思います。
ジェットエンジンの原理を子供向けに説明

ジェットエンジンを子供向けにひと言で表すなら、空気をたくさん吸い込み、後ろへ強く押し出して、飛行機を前へ進ませる機械です。
わかりやすい例が風船です。膨らませた風船から手を離すと、空気が後ろへ飛び出し、風船は反対方向へ動きますよね。ジェットエンジンも、空気を後方へ加速させることで前向きの力を得ています。
ただし、実物は風船よりずっと複雑です。前から吸い込んだ空気を羽根で押し縮め、そこへ霧のように細かくした燃料を混ぜて燃やします。熱くなって膨張したガスがタービンを回し、最後にノズルから高速で出ていく仕組みです。
エンジンの中で一度だけ爆発しているわけではありません。燃焼室では火が安定して燃え続け、その間も新しい空気と燃料が次々に入ってきます。だからこそ、飛行中に連続した推力を出せます。
「空気を吸う」「小さく押し縮める」「燃料を燃やす」「後ろへ勢いよく流す」。まずは、この4段階を覚えておけば十分です。その先に、圧縮機やタービンといった少し専門的な仕組みがつながっています。
戦闘機では吸気口の設計も性能を左右する
戦闘機エンジンの仕組みを理解するとき、エンジン本体だけに目を向けると見落としやすい部分があります。それが、機体の外側に設けられた吸気口と、エンジンまで空気を運ぶ吸気ダクトです。
圧縮機は、どのような状態の空気でも安定して吸い込めるわけではありません。機体が急旋回して空気が斜めから流れ込んだり、超音速の空気がそのまま圧縮機へ届いたりすると、流れが乱れて性能低下や失速につながるおそれがあります。
そこで吸気口とダクトは、空気の速度や圧力を整え、圧縮機の正面へできるだけ均一に届ける役目を持ちます。超音速飛行では、衝撃波を利用しながら空気を減速させ、圧力を回復させる設計も必要です。
ステルス戦闘機では、吸気口からエンジン前面の回転部が直接見えにくいよう、ダクトを曲げる設計もあります。エンジン前面は電波を強く反射しやすいためです。ただし、ダクトを曲げれば空気の損失や流れの乱れが増えやすくなります。
つまり、吸気口は単なる空気の入口ではありません。高速性能、機動性、エンジンの安定性、ステルス性を同時に調整する部分。戦闘機全体の設計思想が表れやすい場所です。
戦闘機に低バイパス比ターボファンが多い理由

現代の戦闘機には、低バイパス比のターボファンエンジンが広く使われています。バイパス比とは、エンジンコアを通る空気量に対して、燃焼室を通らず外側の流路を通る空気量がどれくらいあるかを表す比率です。
旅客機の大きなエンジンは高バイパス比です。大量の空気を比較的ゆるやかに後方へ加速させることで、巡航時の燃費と静粛性を高めています。ただし、大きなファンと太いエンジンカバーが必要になります。
戦闘機では、前面投影面積を抑え、機体内部へ収めやすくし、高速域でも強い推力を得る必要があります。アフターバーナーとの相性も考えなければなりません。そのため、旅客機よりバイパス比を低くした、細く高出力なターボファンが選ばれやすいのです。
ただし、「バイパス比が低いほど必ず高性能」という意味ではありません。燃費、航続距離、赤外線特性、搭載スペース、必要な電力や冷却能力まで含めて決まります。戦闘機でも任務や世代が違えば、最適な数値は変わります。
また、すべての戦闘機がアフターバーナーを備えるわけでもありません。用途によっては、燃費、価格、整備性を優先した非アフターバーナー型のエンジンが選ばれる場合もあります。
戦闘機のアフターバーナーは排気をもう一度燃やす

アフターバーナーは、タービン後方の排気流へ燃料を追加し、もう一度燃焼させる装置です。日本語では再燃焼装置とも呼ばれます。
最初の燃焼室を通った空気には、燃焼に使われなかった酸素が残っています。そこへ燃料を噴射して火を保つと、排気温度と体積が増え、ノズルから出る流れをさらに加速できます。
- タービンを通過した排気へ燃料を追加する
- フレームホルダーが高速の流れの中で火炎を安定させる
- 再燃焼によって排気の温度とエネルギーを高める
- 可変排気ノズルを開き、増えた排気を適切に流す
- 通常運転時より大きな推力を一時的に得る
アフターバーナー使用時にノズルが大きく開くのには理由があります。再燃焼で排気温度と流量条件が変わるため、出口が狭いままではエンジン内部の圧力バランスが崩れ、圧縮機の安定性にも悪影響が出かねません。
推力の増加率は、エンジン形式、飛行速度、高度、ノズル設計などによって異なります。大幅な増加を得られる装置ですが、すべての機種で推力が一律に2倍になるわけではない点に注意してください。
大きな欠点は燃料消費です。アフターバーナーでは、タービンを回すためではなく、排気のエネルギーを直接増やすために大量の燃料を使います。そのため、離陸、急加速、迎撃、空中戦、超音速への移行など、必要な場面に絞って使用するのが基本です。
- 利点:短時間で大きな推力を得られる
- 燃料面:通常運転より消費量が大幅に増える
- 探知面:強い熱と光を発し、赤外線でも目立ちやすくなる
- 騒音面:排気速度が上がり、非常に大きな音が発生する
- 運用面:航続距離との兼ね合いを考えた使用が必要になる
一部の戦闘機には、アフターバーナーを使わずに超音速を維持できるスーパークルーズ能力があります。ただし、どこからをスーパークルーズと呼ぶか、どの速度や搭載状態で維持できるかは機種によって異なります。
圧縮機は回転羽根と固定羽根で空気を高圧化する

圧縮機は、吸い込んだ空気へエネルギーを与え、燃焼に適した高い圧力へ変える部分です。戦闘機用の大型ジェットエンジンでは、空気がエンジン軸とほぼ平行に流れる軸流式圧縮機が一般的です。
内部では、ローターと呼ばれる回転羽根と、ステーターと呼ばれる固定羽根が交互に並びます。ローターが空気を加速させ、ステーターが流れを整えながら速度の一部を圧力へ変換します。これを何段も繰り返し、少しずつ圧力を高める仕組みです。
圧縮比や段数はエンジンごとに違います。原文にあった「一般的に10段以上」「20~40倍以上」という数値は、すべての戦闘機エンジンへ一律に当てはめられるものではありません。低圧圧縮機と高圧圧縮機の構成や、何を一段として数えるかでも見え方が変わります。
圧縮機には、高圧側と低圧側を別々のシャフトで回す構造があります。これが二軸式です。それぞれが適した回転数で動けるため、広い運転範囲で効率と安定性を保ちやすくなります。エンジンによっては三軸式もあります。
シャフトは同心円状に配置されるため、外から見ると一本に見えても内部では別々に回っています。高圧タービンが高圧圧縮機を、低圧タービンがファンや低圧圧縮機を担当する、と考えるとわかりやすいでしょう。
圧縮機で注意したい現象が、コンプレッサーストールとサージです。羽根に沿って流れるはずの空気が剥がれると、圧縮能力が低下します。局所的な失速が広がり、エンジン全体の圧力が大きく変動したり、流れが一時的に逆向きになったりする深刻な状態がサージです。
- 可変静翼で空気の角度を運転状態に合わせる
- 抽気バルブで一部の空気を逃がし、圧力を調整する
- 複数のシャフトを異なる回転数で動かす
- 電子制御装置が燃料流量やノズル面積を調整する
急なスロットル操作、吸気の乱れ、異物の吸い込み、部品の損傷などは、圧縮機の安定性を乱す要因になります。現代のエンジンでは電子制御によって操作に対する燃料供給を調整し、パイロットの指示とエンジン保護を両立させています。
燃焼室は火を消さずに安定して燃やし続ける
燃焼室では、圧縮機から届いた空気へ燃料を噴射します。ただし、圧縮空気をそのまま高速で通しただけでは、炎が後方へ吹き飛ばされてしまいます。
そこで燃焼器内部に流れの遅い領域を作り、火炎を安定させます。空気のすべてを最初から燃料へ混ぜるのではなく、一部を燃焼に使い、残りを温度調整や燃焼器内壁の保護へ回す設計です。
始動時には点火装置を使いますが、安定した後は連続する燃焼によって火が保たれます。飛行中に点火装置を常時使って、何度も爆発させているわけではありません。
燃焼器に求められるのは、限られた長さの中で燃料をよく混ぜ、燃焼を安定させ、圧力損失を抑えながら、タービンへ偏りの少ない温度分布でガスを渡すことです。温度が一部だけ高くなると、後方のタービンを傷める原因になります。
FADECが燃料とエンジンの状態を自動制御する
現代の戦闘機エンジンでは、FADECと呼ばれるデジタル式の電子制御が使われています。日本語では全権デジタルエンジン制御などと表現されます。
パイロットがスロットルを動かすと、FADECは回転数、温度、圧力、高度、飛行速度などをもとに、燃料流量や可変静翼、抽気、排気ノズルなどを調整します。
パイロットの操作をそのまま機械的に燃料弁へ伝えるだけでは、急激な燃料増加によって温度超過や圧縮機の不安定を招くかもしれません。FADECは要求された推力へ近づけながら、エンジンが許容範囲を外れないように動かします。
操縦を楽にするだけでなく、性能、再現性、故障監視、整備データの記録にも関わる装置です。現代の戦闘機エンジンは、空気力学や材料技術だけでなく、電子制御によっても支えられています。
現代の戦闘機エンジンに使われる技術

- 飛行機のエンジンは推力の作り方で分類できる
- ターボファンエンジンはコア流とバイパス流で推力を作る
- 旅客機と戦闘機のエンジンは目的が違う
- 戦闘機エンジンは圧縮空気と耐熱材料で熱から守る
- 可変排気ノズルと推力偏向ノズルの違い
- 単発と双発は推力だけで決まらない
- F-35Bはエンジンの力を垂直方向にも使う
- 逆噴射は旅客機で一般的だが戦闘機では例外的
- 日本のXF9-1から見る次世代戦闘機エンジン
- 戦闘機エンジンの値段は契約範囲によって変わる
- 戦闘機エンジンの仕組みに関するよくある疑問
- 戦闘機エンジンの仕組みについて総括
飛行機のエンジンは推力の作り方で分類できる
| 種類 | 動力・推力の作り方 | 主な用途 |
|---|---|---|
| レシプロ | ピストンで回転力を作り、主にプロペラを回す | 小型機、歴史的な航空機 |
| ターボジェット | 燃焼ガスを高速で噴出し、主にジェットで推力を得る | 初期のジェット戦闘機、一部の高速用途 |
| ターボファン | コアの排気とファンが送る空気の両方で推力を得る | 現代の旅客機、輸送機、戦闘機 |
| ターボプロップ | タービンの動力でプロペラを回し、主にプロペラで進む | 中低速の輸送機、旅客機 |
| ターボシャフト | タービンから軸動力を取り出す | ヘリコプターなど |
| ラムジェット | 高速飛行による空気の圧縮を利用し、回転式圧縮機を使わない | 主にミサイルなどの高速用途 |
戦闘機エンジンの歴史を見ると、初期にはターボジェットが多く使われ、現在は低バイパス比ターボファンが中心になっています。
ターボジェットは比較的細い形にしやすく、高速飛行と相性のよい形式です。一方で、亜音速域を含めた燃費や騒音では不利になりやすいため、現代ではファンによる推力も利用できるターボファンが広く採用されています。
ターボプロップやターボシャフトも、内部では吸気、圧縮、燃焼、タービンというガスタービンの基本を共有しています。ただし、燃焼ガスのエネルギーをどれだけ軸動力へ変え、何を回すかが異なります。
ターボファンエンジンはコア流とバイパス流で推力を作る

ターボファンエンジンでは、前方のファンが取り込んだ空気を二つの流れに分けます。一つは圧縮機、燃焼室、タービンを通るコア流。もう一つは、燃焼室を通らずコアの外側を流れるバイパス流です。
コア流は燃焼によって高いエネルギーを得て、タービンを回した後に排出されます。バイパス流は燃焼しませんが、ファンによって後方へ加速されるため、それ自体が推力を生みます。
| 比較項目 | 高バイパス比 | 低バイパス比 |
|---|---|---|
| 主な採用例 | 旅客機、輸送機 | 多くの現代戦闘機 |
| ファン直径 | 大きくなりやすい | 比較的小さく、細くしやすい |
| 得意な性能 | 亜音速巡航、燃費、静粛性 | 高速飛行、加速、搭載性 |
| アフターバーナー | 通常は搭載しない | 戦闘機用では搭載例が多い |
| 設計上の優先事項 | 長距離を経済的に飛ぶこと | 小型・高推力と広い飛行領域 |
戦闘機向けの低バイパス比ターボファンでも、ファンが送る空気は無駄ではありません。推力を生むだけでなく、エンジン内部やアフターバーナー周辺の流れ、温度管理にも関係します。
高バイパス比と低バイパス比は、どちらかが全面的に優れているわけではありません。旅客機と戦闘機では求める速度、航続距離、太さ、重量、騒音、整備性が異なるため、それぞれに合った設計を選んでいます。
旅客機と戦闘機のエンジンは目的が違う

| 項目 | 旅客機用エンジン | 戦闘機用エンジン |
|---|---|---|
| 主な目的 | 長距離を安全かつ経済的に飛ぶ | 加速、高速、上昇、機動に対応する |
| 重視する性能 | 燃費、信頼性、耐久性、騒音 | 推力重量比、応答性、小型化、高速性能 |
| 代表的な形式 | 高バイパス比ターボファン | 低バイパス比ターボファン |
| アフターバーナー | 通常は搭載しない | 任務と機種によって搭載する |
| 外形 | 太く大きなファンを使いやすい | 機体へ収めやすい細さも求められる |
| 運用上の考え方 | 長時間の安定運転と運航効率を優先 | 厳しい飛行条件への対応と即応性を優先 |
旅客機は、多くの乗客や貨物を乗せて長距離を飛びます。燃料費、騒音、整備間隔、故障時の安全性が運航へ直結するため、高い効率と信頼性が求められます。
戦闘機では、短時間で高度や速度を変え、必要に応じて超音速域へ入る性能が重視されます。空気の流入状態が大きく変わる急旋回や高迎角飛行でも、エンジンが安定して働かなければなりません。
だからといって、戦闘機用エンジンが耐久性や燃費を考えていないわけではありません。航続距離と整備性は実際の任務を左右します。高い推力と軽さを求めながら、必要な寿命、信頼性、燃費も確保するという厳しい設計になります。
F-2に搭載されるF110系エンジンの通常推力とアフターバーナー使用時の違いについては、F-2戦闘機の性能とエンジンの解説でも紹介しています。具体的な機体と結び付けると、仕組みをイメージしやすいかもしれません。
戦闘機エンジンは圧縮空気と耐熱材料で熱から守る

ジェットエンジンの燃焼ガス温度は、タービン部品の材料がそのままでは耐えにくいほど高くなります。それでもタービンが働けるのは、耐熱材料、表面コーティング、内部冷却を組み合わせているからです。
冷却には、圧縮機から取り出した比較的温度の低い空気が使われます。この空気をタービン静翼や回転翼の内部に設けた細い通路へ流し、部品の内側から熱を奪います。
さらに、翼表面の小さな穴から空気を吹き出し、高温ガスと金属表面の間に薄い空気の膜を作ります。これがフィルム冷却です。燃焼ガスが部品へ直接触れにくくなり、金属温度を許容範囲に保ちやすくなります。
| 冷却・耐熱技術 | 役割 |
|---|---|
| 内部冷却 | 圧縮空気を部品内部へ通し、内側から熱を奪う |
| フィルム冷却 | 表面へ空気膜を作り、高温ガスとの直接接触を減らす |
| 耐熱合金 | 高温でも必要な強度を保つ |
| 遮熱コーティング | 金属へ伝わる熱を抑える |
冷却空気を増やせば、必ず得になるわけではありません。圧縮機でせっかく高圧にした空気を燃焼や推力に使わず冷却へ回すため、使いすぎると効率が下がります。
設計者は、部品を壊さない量の冷却空気を確保しながら、できるだけ多くの空気を燃焼と推力へ使えるよう調整します。高温化は性能向上につながりますが、材料、冷却、寿命との綱引きになります。
なお、ジェットエンジンの高温部を一般的な電動ファンで直接冷やしているわけではありません。機体の電子装置や熱管理システムには電力が使われますが、タービン翼の代表的な冷却方法は圧縮機から取り出した空気による内部冷却とフィルム冷却です。
可変排気ノズルと推力偏向ノズルの違い
戦闘機の後ろを見ると、排気口が花びらのような複数の部品で囲まれています。これは、出口の面積を変えられる可変排気ノズルです。
エンジンの回転数、飛行速度、圧力、アフターバーナーの使用状態によって、適切なノズル面積は変わります。出口を狭めたり広げたりすることで、エンジン内部の圧力と排気の状態を調整します。
これと混同されやすいのが推力偏向ノズルです。可変排気ノズルが主に出口面積を変えるのに対し、推力偏向ノズルは噴射方向そのものを上下や左右へ変えます。
- 可変排気ノズル:出口面積を変えて圧力や排気状態を調整する
- 推力偏向ノズル:排気の向きを変えて機体の姿勢制御を助ける
推力偏向を使うと、主翼や尾翼だけに頼らず機首の向きを変えられます。低速、高迎角、急旋回などで効果を発揮しますが、重量、構造、制御、整備の複雑さが増えるため、すべての戦闘機に採用されているわけではありません。
また、円形ノズル、平面的なノズル、機体内部へ埋め込む配置では、空気抵抗や赤外線特性、ステルス性、機動性のバランスが変わります。エンジン単体ではなく、機体全体で決める部分です。
単発と双発は推力だけで決まらない
戦闘機には、エンジンを1基搭載する単発機と、2基搭載する双発機があります。単発は一般に機体を小さく軽くまとめやすく、調達費や整備負担を抑えやすいのが利点です。
双発は合計推力を確保しやすく、片方に不具合が起きた場合でも、条件によってはもう片方で飛行を続けられる可能性があります。ただし、エンジンが二つあれば自動的に安全になるわけではありません。重量、燃料消費、機体価格、整備項目も増えます。
どちらが優れているかは、任務、機体規模、必要な航続距離、搭載量、運用コストによって変わります。エンジン数だけを見て戦闘機の性能や安全性を決めつけないことが大切です。
F-35Bはエンジンの力を垂直方向にも使う
戦闘機エンジンの力を通常とは違う方向へ振り分ける例がF-35Bです。F-35Bは、前方のリフトファン、後方へ向いたエンジンノズル、左右のロールポストを組み合わせて、短距離離陸と垂直着陸に対応します。
エンジンの排気を下へ向けるだけでは、機体前方を支えられず、左右の姿勢も安定しません。そのため、エンジンから取り出した動力でリフトファンを回し、複数の場所へ力を配分します。
仕組みと実際の運用上の制約については、F-35Bの垂直離着陸の仕組みで詳しく整理しています。
逆噴射は旅客機で一般的だが戦闘機では例外的

ジェットエンジンの逆噴射装置は、着陸後や離陸中止時の減速を補助する仕組みです。ただし、ここで押さえておきたいのは、旅客機では広く使われる一方、多くの戦闘機には一般的なスラストリバーサーが搭載されていないことです。
逆噴射といっても、エンジンの回転方向を反対にするわけではありません。通常は排気またはバイパス空気の流れを斜め前方へ向け、前進を妨げる力を作ります。
旅客機の高バイパス比ターボファンでは、外側を流れるバイパス空気の向きを変えるカスケード方式がよく使われます。高温のコア排気すべてを真正面へ向けるわけではありません。
- 車輪ブレーキ:着陸後の主な制動手段
- 逆噴射:車輪ブレーキを補助し、滑りやすい路面でも減速に役立つ
- スポイラー:揚力を減らして車輪へ荷重をかけ、ブレーキを効かせやすくする
戦闘機では、車輪ブレーキ、空力抵抗、ドラッグシュートなどで減速する機体があります。航空母艦へ着艦する艦上機では、アレスティングフックを甲板上のワイヤーへ掛けて停止します。
逆噴射を備えた軍用機や一部の戦闘機が存在しないわけではありませんが、例外的です。重量と構造が増え、異物を巻き上げて吸い込む危険もあるため、必要性を踏まえて採用が判断されます。
なお、逆噴射は車輪ブレーキに代わる万能装置ではありません。FAAの操縦資料でも、車輪ブレーキが主な停止手段であり、逆推力は減速を補助するものとして説明されています。
参考資料:FAA Airplane Flying Handbook
日本のXF9-1から見る次世代戦闘機エンジン
日本で研究された戦闘機用エンジンの例として、IHIが防衛装備庁へ納入したXF9-1があります。IHIの公開資料では、大推力化とスリム化を両立させる研究から生まれた推力15トン級のプロトタイプエンジンと説明されています。
戦闘機では、エンジンを太くすればよいとは限りません。機体内部には燃料、兵装、脚、電子機器などを収める必要があり、ステルス性を考えると外形にも制約があります。限られた直径の中で、多くの空気を取り込み、高い圧力と温度に耐えながら推力を生み出さなければなりません。
さらに、将来の戦闘機ではレーダー、電子戦装置、各種センサーのための発電能力や冷却能力も欠かせません。エンジンは機体を前へ進ませるだけでなく、機体全体のエネルギーを支える役割も大きくなっています。
ただし、XF9-1は公開情報上、研究のために製作されたプロトタイプです。特定の量産戦闘機へ、そのまま搭載される実用エンジンと決めつけない方が正確でしょう。
日本の戦闘機開発とXF9-1の位置づけは、日本の戦闘機開発と次世代機の解説でも紹介しています。
戦闘機エンジンの値段は契約範囲によって変わる

戦闘機エンジンは高価ですが、「1基いくら」と一つの金額で断定するのは簡単ではありません。公開される契約額には、完成エンジン以外の費用が含まれることが多いからです。
- 搭載用の量産エンジン
- 予備エンジンや交換用モジュール
- 長納期部品や予備部品
- 専用工具や試験設備
- 技術支援、工程管理、教育
- ソフトウェアや仕様変更への対応
- 将来の整備や維持支援
たとえば、米国防総省が2018年に公表したF135関連契約には、合計85基の推進システムに加え、生産に伴う一時費用、工具、管理作業、各国固有の項目などが含まれ、契約額は約20億ドルでした。
単純に割ると1基あたり約2,370万ドルになりますが、これはエンジンだけの正確な販売価格ではありません。契約に含まれる内容も、通常離着陸型と短距離離陸・垂直着陸型の違いも無視した参考計算にすぎません。
そのため、「F135は1基約1億ドル」と一律に説明するのは適切ではないかなと思います。少なくとも、どの年度の契約か、どの型式か、予備品や支援費を含むのかを確認する必要があります。

価格が高くなる背景には、耐熱材料、単結晶タービン翼、高精度加工、電子制御、アフターバーナー、可変ノズルなどがあります。少ない重量と限られた直径で大きな推力を得るため、製造精度や品質管理にも厳しい条件が課されます。
生産数が民間の量産製品ほど多くないこと、開発試験や安全保障上の管理に費用がかかることも無視できません。購入後には分解検査、部品交換、改修、予備品確保が続くため、導入価格と生涯の維持費は分けて考える必要があります。
戦闘機エンジンの価格を比較するときは、数字の大きさだけで判断せず、「エンジン本体だけか」「推進システム全体か」「支援費を含むか」まで確認するのが失敗しにくい見方です。為替によって日本円換算額も変わるため、円表示には換算時点の確認も欠かせません。
参考資料:米国防総省のF135関連契約
戦闘機エンジンの仕組みに関するよくある疑問
戦闘機エンジンの仕組みについて総括
戦闘機のエンジンは、炎を後ろへ出すだけの単純な装置ではありません。吸気口から排気ノズルまで空気の状態を細かく制御し、限られた大きさと重量の中で強い推力を作っています。
- ジェットエンジンは空気を取り込み、圧縮、燃焼、排気の順で動く
- 推力は空気と燃焼ガスを後方へ加速させることで生まれる
- 吸気口は空気の流れを整え、超音速域や高迎角でも圧縮機を支える
- 圧縮機は回転羽根と固定羽根を何段も使って空気を高圧化する
- 燃焼室では燃料を一度だけ爆発させるのではなく連続燃焼させる
- タービンは燃焼ガスから動力を取り出し、圧縮機やファンを回す
- 現代の戦闘機では低バイパス比ターボファンが広く使われている
- 低バイパス比は小型化や高速性能に向くが、常に最良とは限らない
- アフターバーナーはタービン後方で燃料を再燃焼させる
- アフターバーナー使用時は燃料消費、熱、騒音が大きく増える
- 可変排気ノズルは運転状態に合わせて出口面積を変える
- 推力偏向ノズルは排気方向を変えて姿勢制御を助ける
- タービンは圧縮空気、耐熱材料、コーティングで熱から守られる
- FADECが燃料流量や各装置を調整し、性能と保護を両立させる
- 逆噴射は旅客機で一般的だが、多くの戦闘機では採用されていない
- 戦闘機は車輪ブレーキやドラッグシュートなどでも減速する
- 戦闘機エンジンの価格は契約範囲によって大きく変わる
- 公開契約額を機数で割った数字は、正確なエンジン単価とは限らない
次に戦闘機を見る機会があれば、後方の炎だけでなく、吸気口の形、機体へ収められたエンジンの位置、排気ノズルの開き方にも注目してみてください。空気がどのように入り、どこで圧縮され、どの方向へ出ていくのかを想像すると、機体ごとの設計の違いがぐっと見えやすくなります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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